ASTS×楽天に国が1500億円補助|“日本版スターリンク”の中身と株主が見るべき3つの論点
2026年7月、宇宙通信ベンチャーAST SpaceMobile(ティッカー:ASTS)をめぐり、日本市場にとって見逃せないニュースが飛び込んできましたね。
日本政府(総務省)が、楽天グループ主導の連合に対して、AST SpaceMobileと共同で構築する低軌道衛星通信網に最大1,500億円(約9.26億ドル)を補助する事業者として、正式に採択!
筆者はASTSを実際に保有している一投資家として、この動きを強く注目してます!
以下、事実の整理と、そのうえでの個人的な考察を。
何が起きたのか(事実)
まず、ニュースの要点を3つのパートに分けて整理します。
① 制度の背景 ―「J-LEO」とは
- 総務省が推進する国家事業「自律性確保に向けた低軌道衛星インフラ整備事業
(J-LEO:Japan Low Earth Orbit Satellite Communications Project)」。 - スマートフォンと低軌道衛星が直接つながる通信インフラの整備が目的。
- 財源は令和7年度(2025年度)補正予算で、規模は3年間で最大1,500億円。
② 採択の中身 ― 楽天連合(RAST)が選定
- 2026年6月30日、基金設置法人 CIAJ(情報通信ネットワーク産業協会)が間接補助事業者を採択。
- 採択されたのは申請代表:RAST株式会社/共同提案:楽天モバイル株式会社。
- RAST株式会社とは? ― 社名の由来どおり「Rakuten(楽天)」と「AST(AST SpaceMobile)」が設立した合弁会社。
- 出資比率はほぼ対等ながら楽天が経営を主導し、楽天モバイルの子会社に位置づけられる。ASTの衛星を調達し、日本国内専用の通信網を整備する役割を担う。
③ 狙い・スケジュール・株価の反応
- 狙い:経済安全保障上の優先課題として、スターリンク(Starlink)など海外ネットワークへの依存を低減する。
- 商用化:「Rakuten最強衛星サービス Powered by AST SpaceMobile」として、2026年第4四半期(10〜12月)の開始を目指す。
- 株価:ASTS株は2026年6月29日に約21%高、終値86.77ドルを付けた(約2年ぶりの大幅高。直前1か月は約17.9%下落していた反動も大きい)。翌6月30日終値は88.86ドル(前日比+2.41%)。
※出典:総務省「自律性確保に向けた低軌道衛星インフラ整備事業(J-LEO)」公式ページ(令和7年度補正予算・1,500億円)。事業者採択は2026年6月30日に基金設置法人CIAJが公表(申請代表:RAST株式会社/共同提案:楽天モバイル株式会社)。
関連銘柄の株価チャート(TradingView)
AST SpaceMobile(NASDAQ: ASTS)
楽天グループ(TSE: 4755)
※チャートはTradingViewの埋め込みウィジェットによる参考値です。日本株(東証銘柄)は無料埋め込みの仕様によりチャート本体が表示されない場合があります(リンクからTradingViewで確認できます)。売買の際は必ず最新値をご確認ください。
なぜ重要なのか
今回のニュースが重要な理由は、大きく3つ。
- 収益源とパートナーの明確化
ASTSにとって日本という巨大市場での具体的な事業パートナー(楽天)と資金の裏付けができました。政府の正式採択と大手キャリアの後ろ盾がついた点が大きな違い。 - 国策マネーという安定資金
背景にあるのは「経済安全保障」という国家戦略であり、景気や相場に左右されにくい資金。事業の下支えに。 - セクター全体のテーマ性向上
スターリンク(SpaceX)への対抗軸という構図が、宇宙通信セクター全体の注目度を一段引き上げます。
個人投資家としての視点・考察
(※以下は筆者の見解であり、事実ではありません)
ここからは、実際にASTSを保有し、SPIR(Spire Global)やPL(Planet Labs)といった宇宙関連株も追っている一個人投資家としての、率直な考えです。
そもそも現状のASTSは「技術と夢は凄い、大規模契約の締結も進んで稼ぎ始めてる」が、時価総額は期待値先行の超巨大グロース株。そして、低軌道衛星の資産寿命の短さによる多額の再投資コストがかかるという弱点があります。
ただ、今回のニュースは、その弱点に対して「日本+楽天+国策補助金」という具体的な回答を与えた点で、質的に一段違うかもしれません。
特に日本の投資家としては、身近な楽天が絡むことで事業の実像がイメージしやすく、応援したくなる材料でもあります。
強気(ブル)に見るべき3つの論理的理由
①最大の弱点「打ち上げコスト」の国策による肩代わり
前述の通り、ASTSの最大の懸念は「終わらない打ち上げ・機材調達コスト(再投資地獄)」、そしてそれに伴う「度重なる増資(株主価値の希薄化)」でした。
今回の総務省による3年間で最大1,500億円(費用の最大半額)の補助は、日本上空をカバーするための衛星調達、ロケット打ち上げ費用、地上ゲートウェイ局の建設費に直接充てられるかも?
これは、ASTSが自前で血を流す(または市場から調達する)はずだった巨額の資本支出を、日本政府が代わりに支払ってくれることを意味します。
財務的な負担軽減効果は計り知れないのでは。
②プラチナバンド(700MHz帯)の規制緩和という「技術的優位性」
この採択に合わせて、総務省は2026年9月にも規則を改正し、700MHz帯での衛星直接通信を認可する方針を示してます。 競合のStarlink(KDDI連合)は2GHz帯などの高い周波数帯を使用しますが、楽天・ASTS連合は、楽天が地上戦で苦労して手に入れた「プラチナバンド(700MHz帯)」をそのまま宇宙からスマートフォンへ届けることができます。
電波の特性上、700MHz帯は遮蔽物に強く、建物内や山間部での繋がりやすさにおいて技術的な優位性を国策レベルで担保されたことに。
③「日本版Starlink」としての経済安全保障上の独占ポジション
日本政府がこれだけの巨費を投じる動機は、「SpaceX(Starlink)という海外の特定一社に、日本の災害時や有事の通信インフラを完全に握られるリスク(経済安全保障上の死角)」を回避するためか。
政府公認の「自律的な国内通信インフラ」の相棒としてASTSの技術が選ばれたわけであって、将来的に防衛省、自治体、警察、消防といった官公庁・行政向けの極めて手堅いBtoG(政府向け)のサービス売上が、日本市場においてほぼ約束されたと言えるかも。
それでも冷静に見るべきリスクは、、
2028年度までの「ビデオ通話提供」という厳しいノルマ
政府が1,500億円を出す条件として、楽天・AST側には「2028年度末(2029年3月31日)までに、市販スマートフォンで全国どこでも衛星直接通信が利用でき、1日の70%の時間帯でビデオ通話が可能な水準のサービスを一般利用者に提供すること」などの要件が課されています。
ただのSMSテキストメッセージの送受信や電話であればすでにKDDIとStarlinkが実用化してますし。
ASTSの次世代衛星の量産や、SpaceX(あるいは競合ロケット)による打ち上げスケジュールが少しでも遅延した場合、補助金要件の未達や計画見直しを迫られるタイムラインリスクが生じます。海外インフラに頼りすぎるという経済安全保障の観点でも遅れは困る。
1500億円の「分配スキーム」の精査が必要
この補助金はあくまで「日本国内の楽天主導の連合(新会社)」に対して支払われるもの。
そのうち、米国本社であるASTSの製品売上(ライセンスや衛星製造の対価)としていくら直接還流し、純利益(EPS)をどれだけ押し上げるのか、今後の契約のディテールを注視する必要があります。
色々と書きましたが、
Starlink一強つまらないのと、宇宙ロマン枠ということで基本スタンスは長期保有です。
短期の値動きは荒いものの、筆者自身はASTSを基本的に手放すつもりはなく、長期で腰を据えて保有を続ける方針です。
今後は、(a)交付額の確定と条件、(b)RASTの出資比率・収益分配の詳細、(c)2026年第4四半期とされる商用化スケジュールの進捗――をチェックしながら、慌てず付き合っていくつもりです。
こうしたテーマ株を考えるうえで、事業の本質的価値を見極める投資の基礎は有効だと感じており、個人的にはビジネスエリートになるための教養としての投資のような一冊を折に触れ読み返しています。
まとめ
総務省J-LEO事業による最大1,500億円の補助対象への採択と、楽天(RAST)×AST SpaceMobileの連合は、ASTSの「収益化向上」・「日本版Starlink」としての経済安全保障上の独占ポジションを具体化する大きな一歩かなと。
日本発の「スターリンク対抗」という国策テーマとしても注目度が高く、保有株主としては前向きに受け止めています。
ただし、交付の詳細や商用化スケジュールにはまだ不確実性があり、宇宙株特有のボラティリティも大きい点は冷静に踏まえたいところです。
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※本記事は情報提供を目的としたものであり、投資勧誘・投資助言ではありません。投資は自己責任でお願いします。